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#389

↓こちらは同じく「伊藤和夫の英語」に掲載されていた「寄稿者のことば」の転載です。

寄稿者のことば
伊藤先生のことを偲んで書いたもので途中少々感情が入ったのですが、あえて 突き放した書き方をしたような気がします。喜怒哀楽を「喜んだ・怒った」と 書くよりも机をダンダン連打する姿を客観的に書き連ねた方が先生らしくなった と言っていいと思います。先生は本心は決して冷たい人ではないのですが、 照れ隠しなのか初対面の人には冷たい態度をとられるところがありました。 なかなか心を開かない方であったと思います。ハードカバーの「英文解釈教室」に 見られる無味乾燥な学術書的な部分は学究としてのプライドと照れ隠しの所産で あったと思います。英語板かこちらかのどちらかで書いたと思いますが、時々 引用されていましたが、むしろ駄文で申し訳なくさえ思っています。

97年の冬がご葬儀でしたので記述から見て2年くらい前でしょうか?(伊藤先生は 小柄でやせ型なのに、おなかがポコンと出ていたのがご愛嬌でした。)それから 3年ほどして「駿台講師・伊藤和夫」の生みの親とも言える奥井先生のご葬儀でした。 書物の内容の古さや語彙の難しさには批判もあるかと思いますが、繰り返し使った TEXTを本にして版を重ねているのでその点はやむを得ないかもしれません。 今、手元にはないのですが、新・英頻はPart1の方が英文の骨格を学ぶ上では よろしいかと思います。Part2は入試問題が出典だと思いますが、入試では 未だに出るから仕方なく載せているといった少々古い熟語もあるかもしれません。 as is often the case with you や speak ill(well)of-,but for-を始め、 やや古いものは入試のためと割り切って覚えた方がよいかもしれません。 英語も口語・文語・古語・女性語(差別的な意味ではなくI’m wonderingや感嘆文 など訳語も確かに女性的な訳にはなっていますが…男性はあまり使わない方が 無難です。)・誤解を招く表現などを教えるべき時に来ていると思います。要約や和訳が出題されるのはやはり、きちんとした論理と解釈力を期待してのこと なので国立大は少なくとも突然TOEICのような出題には変わらないでしょう。 伊藤先生は高校生・予備校生を大人扱いされていました。ビジュアルの中の教師と生徒という設定は自分では演じきれない理想だったと思います。みなさんは自分の 学力を過信することも、逆に卑下することもなく、力量に見合ったものをやり遂げ、 最後は過去問に取り組むことが合格への近道だと思います。そして思考方法が身に ついたら先生の書物と「伊藤和夫」を「忘れ去る」こと(「英文解釈教室」あとがき) が伊藤和夫流の「ほっといてくれ」的な遺言だと思います。こうして没後何年も 語られるのは決して迷惑には思っていないような気もするのですが…。 批判も本当は喜んでいるし、むしろ挑戦を受けて立ちたいとさえ思っているでしょう。 ネタにし、大いに語り、学んでほしいとおもっていることでしょう。「文章のうまさ」…恐縮です、駿台世界史のO氏の方が上です。彼はゴーストとして 有名人のベストセラーを何冊も生んでいます。(これは余計なお世話です。)

ついでに「最大多数の最大満足をもって…」という伊藤先生の授業方針は もちろんベンサムの言葉。スピノザの東大哲学科の卒論といい、古きよき 時代を感じさせます。9割の人が9割理解できればいい、ということで異論反論は質問手順を組み立ててから講師室に訊きに来なさい、ということだったのでしょう。
訂正:2行目「ベンサムの言葉をもじった言葉」(「最大多数の最大幸福」ですね)

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