【2023年7月28日発売】『基礎英文のテオリア 英文法で迫る英文読解の基礎知識』に注目すべき理由

2023年7月28日発売
石原 健志、倉林 秀男 著
『基礎英文のテオリア』(Z会)
A5判/2色刷 本体192ページ
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Z会
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2023年7月28日、『基礎英文のテオリア 英文法で迫る英文読解の基礎知識』が発売されました。

『英文解釈のテオリア』『英語長文のテオリア』に続く、「テオリア」シリーズの第3弾です。

表紙が赤いことから、「赤テオリア」と呼ばれています。

人気の「テオリア」シリーズということで発売前から期待が高まっているのですが、今回はこの『基礎英文のテオリア』に特に注目すべきポイントを語ってみたいと思います。

一番大事な英語の「基礎」を学べる

〈語順〉と〈品詞〉から英文の構造に迫る〈文法解説〉
英文読解の土台となる〈語順〉と〈品詞〉について、基本からしっかりと学ぶ構成により、書き手が英文に込めた〈メッセージ〉に迫るための前提となる、英文の構造を正確にとらえ、意味を読み解く力が身につきます。

英文を読み解く感覚を追体験できる〈英文解説〉
英文解説は1文につき1ページ。英文の構造について、細部までていねいに分析した解説を読むことで、構造をしっかりと理解できるとともに、英文を左から右に読む、いわゆる〈直読〉の感覚を追体験できます。

大学入試にも対応した〈実例をもとにした英文〉
英文は大学入試で出題されたものを中心に掲載。実例をもとに英文の構造について学ぶことで、大学入試はもちろん、ニュースや小説などにも対応できる実戦的な英文読解力の基礎固めを行うことができます。

Z会公式サイトより引用

というわけで、本書は「語順」と「品詞」を学ぶという内容になっているとのこと。

この「語順」と「品詞」こそが、英語が苦手な人が真っ先に学ぶべきものなのですが、現在では軽視されていると言わざるを得ません。

日本語と英語の大きな違いのひとつは「語順」、つまり言葉の並べ方が違うところにあります。

また、「品詞の理解と識別は,英語学習の第一歩」(森一郎『試験にでる英文解釈』青春出版社)と言われるぐらい、品詞の理解は英語学習で重要なものです。

もちろん、総合英語などの英文法の参考書にも「語順」や「品詞」は説明されています。

でも、「語順」や「品詞」の知識が英文を読む時にどう役立つのかというのは、英文法の参考書を読んでもなかなか見えてこないのです。

そこで、「語順」と「品詞」を正しく理解できて、しかも苦手な人でも無理なく取り組める参考書が必要なわけです。

品詞の理解と識別については、伊藤和夫著『英文法どっちがどっち』(復刊ドットコム)という名著があったのですが、さすがにそろそろ品切れになりつつあります。

つまり、今の参考書では「語順」や「品詞」という英語学習の基礎を教えてくれるちょうどいい参考書があまり見当たらないのですね。

そういう状況で、実績ある「テオリス」シリーズから苦手な人でも取り組める参考書が出るというのがまず注目すべき理由です。

「意味順」の採用

さて、この『基礎英文のテオリア』の特長の一つが、「意味順」を採用しているということです。

「意味順」というのは田地野 彰京都大学名誉教授が生み出した英語指導法で、多くの教材が世に出ています。

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英文は「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」 という「意味のまとまりの順序=意味順」から成り立っていて、この順番に英語の語句を並べていくと、正しい英文が作れるというものです。

「意味順」は文法用語を最小限しか使わないで済むため、小学生でも理解できるぐらいとっつきやすく、しかも従来の英文法とも接続できるという非常に優れた方法なんですね。

もちろん、英語が超苦手な高校生・受験生にとっても「意味順」は非常に役立つものです。

ただ、「意味順」を採用しているのは小学生・中学生向けの参考書が多く、実際に「意味順」で大学受験用の参考書に接続するルートは確立されていませんでした。

田地野先生の許可を取って「意味順」を採用した『基礎英文のテオリア』は、この点でも画期的な参考書になりえるでしょう。

伊藤和夫の「予測と修正」

著者のお一人、倉林秀男先生が『基礎英文のテオリア』に込めた思いを書かれた文章を公開しています。

ここで書かれているように、英文を読む時にどういうアタマの働かせ方をするのかを、これ以上ないほどていねいに言葉を尽くして解説したのが『基礎英文のテオリア』の特長と言えるでしょう。

たとえるならば、電車の運転手のように英語を読む時の手順を一つ一つ指をさしながら確認していくやり方です。

面倒なようですが、この方法を習得すれば今までなんとなくフィーリングで英語を読んでいた人も初見の英文を正しく読めるようになるというわけですね。

そしてこの方法は、左から右へ英文を読み、主語や動詞などの構造を予測して、予測と合わない場合は修正するという「予測と修正」です。

実はこれ、伊藤和夫師が『ビジュアル英文解釈』などで行っているのと共通した方法なんですね。

そういう意味では『基礎英文のテオリア』は伊藤和夫師の流れをくんでいるとも言えます。

もちろん『基礎英文のテオリア』から『英文解釈のテオリア』につなぐのが「正規ルート」なのでしょうが、『ビジュアル英文解釈』などの伊藤師の参考書につなぐということも可能でしょう。

伊藤和夫流の英文解釈を現代によみがえらせるという点でも、『基礎英文のテオリア』には注目したいと思います。

それだけではなく、『基礎英文のテオリア』の内容を理解していれば英語を読む時の解像度が上がるので、他のどんな参考書や予備校の授業も理解しやすくなるはずです。

図解もなく、ひたすら文字がずらーっと並んでいるというスタイルなので、ぱっと見て抵抗感がある人もいるかもしれませんが、英語が苦手だけどどうしたらいいのか手掛かりがつかめない人にはぜひ手に取ってほしい参考書となっています。

コメント

  1. ちんく より:

    『英文法どっちがどっち』は持ってませんが、『英文解釈教室 入門編』と内容的に重複しているので、伊藤和夫本コレクター以外には買う必要が全くないという趣旨の記事を読みました。
    https://morinokumasyan.blogspot.com/2018/05/blog-post_26.html

    実際どうなんでしょう。

  2. 英語参考書マニアックス 英語参考書マニアックス より:

    >ちんく様

    コメントありがとうございます。

    『英文解釈教室 入門篇』は「どっちがどっち」の内容をほぼそのまま使用していて、実質的な改訂版と言えるかもしれません。

    ただ、「どっちがどっち」のほうが問題数が多いのと、短文の問題だけで完結していてコンパクトなところは利点と言えますね(「入門篇」は英文解釈の部分が重い)。

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