【今でも読める】コンセプトが面白すぎる80~90年代参考書の名シリーズ

なぜ、参考書マニアは古い参考書を好むのか?

それは、参考書に特別な興味や思い入れがない方にとっては不思議なことかもしれません。

理由は人それぞれだとは思いますが、その中の一つに「昔の参考書は、面白い発想のものが多かった」というのがあります。

特に受験バブルとも言われた80~90年代には、秀逸なコンセプトのシリーズが多く生まれたのです。

そこで、今から約30~40年前に生まれた参考書で、その秀逸な発想や企画力から現在でも存続しているシリーズをご紹介します。

実況中継シリーズ

現在でも人気の語学春秋社による「実況中継」シリーズ。

元々は、当時代々木ゼミナールの講師だった山口俊治先生の受講生が、山口先生の英文法の講義を一言一句残さず、冗談までノートに書き残していたことから始まったと言われています。

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この『山口英文法講義の実況中継』以前にも講義口調で書かれた参考書はありましたが、この本の特徴は実際に予備校で行われた授業を参考書に再現したところです。

超一流の講師による独特の語り口、普通の参考書にはあまり書いていない予備校の「秘術」のような解説、講義ならではの雑談やジョークが、堂々と参考書に載ったのは画期的でした。

初版が発売された1985年は、まだインターネットでの映像授業などはない時代。
代ゼミや駿台などの大手予備校の授業は、東京・大阪などの大都市の学生でないと受講できないものでした。

「大手予備校ではこんな面白い授業をやっているのか」と全国の受験生に衝撃を与え、その読みやすさによって広く長く支持されるシリーズとなりました。

駿台レクチャーシリーズ(駿台レクチャー叢書)

駿台予備学校からも予備校での単科講座を誌面にしたようなシリーズが出ました。
それが「駿台レクチャーシリーズ」(当初は「駿台レクチャー叢書」)です。

このシリーズの特徴は、何と言っても駿台の各教科の主任級の講師が執筆していたところ。

英語の伊藤和夫師、奥井潔師、入不二基義師、数学の秋山仁師、現代文の藤田修一師、古文の関谷浩師、日本史の安藤達朗師、物理の坂間勇勇師、化学の石川正明師など……。

中でも有名なのは伊藤和夫師の代表的著作でもある『ビジュアル英文解釈』です。

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予備校での英文解釈の授業のように丁寧な解説。しかも、各章の終わりには「Home Room」というコーナーがあり、架空の生徒と「I先生」による質疑応答で疑問点を洗い出していきます。

この質疑応答が時にドタバタの喜劇のような展開を見せ、他の参考書にはない味になっています。

なお、現在でも人気の霜栄『現代文読解力の開発講座』も元はこのシリーズでした。

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受験面白参考書(オモ参)

主に代々木ゼミナールの講師を起用したのが、大和書房の「オモ参(受験面白参考書)」シリーズです。

とにかく、「読んで面白い」ことを優先した参考書で、おカタい参考書が苦手な受験生でも読み通せるのが特徴でした。

執筆陣は古文の土屋博映先生、現代文の酒井敏行先生、漢文の中野清先生、世界史の武井正教先生など。

ただ、書いているのは実力ある人気講師ですから、ただ面白いだけでは終わりません。笑いながら読めて、ちゃんと実力もつくような作りになっていました。

このシリーズの代表は、やはり土屋博映先生による『土屋の古文』でしょう。

もちろん古文の解説もちゃんとあるのですが、普通の参考書ではありえない独断と偏見のコメント、本文と関係ない脱線、ギャグの連発という捧腹絶倒の内容。

土屋先生の文才が遺憾なく発揮された参考書でした。

田村秀行先生「梵我堂主人」なる謎の人物おそらく架空の人物)とコンビを組んで、予備校では担当していなかった小論文の参考書『梵我堂の本音で迫る小論文』を出すなど、かなりやりたい放題やっていますw
(※田村先生はこの本のヒットにより、後に代ゼミで小論文の講義を持つことになりました)

また、宮尾瑛祥(慈良)先生による『宮尾のアッと驚く英語長文読解ルール』は、受験参考書としてはかなり早い時期にパラグラフリーディングを使った英語長文の読み方を解説した本で、参考書の歴史に残る一冊と言えます。

現在でも販売されている『富田の英文読解100の原則』は、元々この「オモ参」シリーズでした。
「面白」の要素は薄いものの、富田一彦先生の強烈な個性が出た参考書ではありますね。

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今でも輝きを失わない名著たち

「古い参考書が良い」と言うと、懐古厨とか言われるかもしれません。

でも、現在の受験参考書の業界では、一つヒット作が出ると、それに群がるように他社も類似のコンセプトの参考書を出しまくるという傾向があります。

もちろん、現在の著者の先生方も新しいものを生み出そうと頑張っているとは思いますが、どうしても斬新なコンセプトのものは世に出にくいのが現状です。

その結果、書店の本棚には似たような参考書ばかりが並ぶことに……。

でも、80~90年代には、受験生を夢中にさせた、量産型ではない尖ったコンセプトの参考書がたくさんありました。そんな古い参考書たちは、今でも輝きを失っていないと思うのです。

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