2023年9月、『総合英語able New Edition』がKindleで復刊して話題となりました。
一度は絶版になっていたものの、SNSで評判が広まって、異例の復刊となったものです。
今回はこの『総合英語able』がどんな参考書なのかをご紹介したいと思います。
※この記事は第一学習社提供による広告です。
絶版から奇跡の復活
『総合英語able(エイブル)』は第一学習社による「総合英語」の参考書です。
総合英語という分野は高校で採用されるため、多くの出版社が力を入れていて、各社が特徴のある参考書を出しています。
『総合英語able』は内容的には優れていたのですが、他社との競争でシェアを伸ばすことが難しく、あえなく絶版に……。
それというのも、『総合英語able』は学校専売品だったからなんですね。
つまり、一般の書店に並ぶことがなく、多くの人の目に触れる機会がなかったのです。
学校ではどうしても既存の有名な参考書が採用されることが多く、斬新な内容の『総合英語able』の採用率は低かったようです。
それでも『総合英語able』が絶版になると、早くからこの本の良さに目をつけていた人たち、特に先生方からSNSで絶版を惜しむ声が聞かれるようになりました。
するとヤフオクやメルカリなどで高値で取引されるようになり、入手困難な状態になっていきます。
そんな復刊を求める声に応えて、電子書籍のKindle版という形で復刊されることになりました。
学校専売品がKindleで復刊というのは極めて異例で、第一学習社としても初めての事例だそうです。
なお、復刊の経緯はこちらのリリースでくわしく書かれています。
言語学の知見を取り入れた総合英語の参考書
さて、『総合英語able』は他の総合英語の参考書と何が違うのでしょうか?
大きな特徴は言語学の知見を取り入れた正確な解説です。
しかも、いかにもとっつきにくい難しい文法解説というわけではなく、高校生でも十分理解できるようにかみ砕いた解説を行っているというのもすごいところです。
英語を勉強していると必ず出てくる「なぜ?」という疑問を解消できる解説が数多く散りばめられています。
例えば、「時や条件を表す副詞節中では、未来のことも現在形で表す」という、英文法を勉強してると必ず出てくるものがありますね。
こういうルールが出てくると、とたんに英文法がわからなくなるというつまづきの原因にもなったりします。
『総合英語able』ではこのように解説されています。
1つの考え方は,「主節の内容が未来を表しているので,副詞節では未来を明示する必要はない」というものである。(中略)比喩的に言うと,副詞節中の現在形は,主節の表すwillの未来の意味に,言わば「便乗・ただ乗り」しているのである。
『総合英語able』90ページより引用
「便乗・ただ乗り」というわかりやすい比喩で解説されています。こういう解説があれば、今まで丸暗記するしかなかった謎ルールも、納得して覚えることができますね。
豊富なコラムで読者の理解を助ける
このように読者の理解を助けるコラムが多いのが『総合英語able』の特長です。
読者の疑問に答える「WHY?」、混同しがちな内容の識別法が書かれた「どう違う?」、実際にどのような表現が使われているかを示す「コーパスで知る」などのコラムがあります。
特徴的なのが「コーパスで知る」のコラムで、『総合英語able』の監修者である赤野一郎先生はコーパス(コンピュータによる解析が可能な大量の言語テキストデータ)研究で有名な先生なんですね。
英作文でどの表現を使うべきか迷ってしまうような場合も、「コーパス」によってどのような表現が好んで使われているのかを知ることができます。
このように、『総合英語able』は英作文などの発信に強い文法書といえると思います。
また、「辞書を引こう」というコラムもあります。これは辞書の引き方を教えてくれる課題になっています。
辞書というと、知らない単語の意味を調べるためだけのものだと思っている人も多いのですが、文法学習にも役立つということがわかります。
例えば、P205には「動詞want」というコラムがあります。
wantなんて基本的な単語を辞書で引いたりしないという受験生も多いと思いますが、実際に調べてみるとwantがどのような構文の中で使われているのかを知ることができます。
このように『総合英語able』はただの文法書ではなく、英語の学習の幅を広げてくれる参考書なのです。
話題の「連鎖関係詞節」も登場
最近、X(旧Twitter)で「連鎖関係詞節」が話題になりました。
なかなか難しい文法用語ですが、今では多くの参考書で使われているようです。
『総合英語able』では10年前の段階ですでにこの用語を使っていたということなので、先進的な参考書であったことがよくわかります。
ただ、総合英語という分野は先進的ならいいというものでもないのが難しいところで、学校の先生は自分が教えやすい参考書を選ぶので、どうしても保守的なものが好まれるという傾向はあるようです。『総合英語able』の売り上げが今ひとつ伸び悩んだのもその辺に理由があるのかもしれません。
一歩進んだ文法の参考書を求める方に
『総合英語able』の監修は前述のように赤野一郎先生です。赤野先生は『ウィズダム英和辞典』編集主幹で、英語コーパス学会の会長も務めれた方です。
また、執筆者には『入試実例 コンストラクションズ 英文法語法コンプリートガイド』、『基礎英文のテオリア』(共著)の著者として最近注目される石原健志先生の名も。
このような優れた知見を持った執筆者陣も、『総合英語able』が注目されたポイントのひとつです。
ただ、わかりやすく書かれているとはいえ、情報量が多く、英文法を全く勉強をしたことがないという人や苦手な人には難しい参考書ではあります。
ある程度、英文法の学習が進んだ受験生がわからないことや気になることを調べるために使うというのがいいかもしれません。
また、英語を教える立場の方が読んでも、本書の工夫された解説は大いに参考になるのではないかと思います。
なお、第一学習社による『総合英語able』のコラムがかなり力が入っていて熱いので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
コメント