前回の続きです。
前回の記事:英和辞典の選び方2023 その1~英和辞典って必要なの?
「英和辞典は基本語の解説が充実しているものを選ぶ」ということで、今回はおすすめの辞書をご紹介します。
電子辞書は是か非か
辞書というと、まず選択肢に入るのは電子辞書だと思います。
「電子辞書か紙の辞書か」というのもずっと前から議論になっている大問題です。
「絶対に紙でなくてはダメ」という先生もいらっしゃいますが、最近は電子辞書の性能も上がっているので、「電子辞書でもいい」という先生も多いのではないかと思われます。
基本的には電子辞書も紙の辞書と同じ内容が収録されています。
したがって「電子辞書か紙の辞書か」というのは、好みの問題以上のものではないと言えます。
ただ、電子辞書に収録されているのは『ジーニアス英和辞典』『ウィズダム英和辞典』『オーレックス英和辞典』がほとんどなんですね。
これらはもちろん優れた辞書なんですが、一般的な受験生にとってはちょっとレベルが高いのです。
それに対して、紙の辞書はもっと豊富なバリエーションがあります。
紙の辞書のほうが、自分に合ったレベルの辞書も見つけやすいわけです。
また、紙の辞書は一度に目に入る情報が多いので、「読む」という目的には適しています。
英和辞典のコラムや巻末の付録など、辞書の「読み物」を読むには紙の辞書のほうが優れていると言えます。
確かに電子辞書は便利さの捨てがたいので、電子辞書に加えて紙の辞書も持っておくと学習の幅が広がります。(もちろん、辞書は3000~4000円はするものなので、お金に余裕がなければ電子辞書だけでも十分です)
英和辞典にはレベルがある
さて、英和辞典を選ぶときに気をつけなけばいけないことがあります。
それは「英和辞典にはレベルがある」ということ。
本屋さんの辞書売り場に行くと、何十冊もの英和辞典が置いてあります。
しかも、同じ出版社が何冊も英和辞典を出しています。
どうやって選べばいいのか戸惑うかもしれませんが、「英和辞典のレベル」を知っていれば簡単です。
おおざっぱな分類ですが、以下のようなレベル分けをしています。
受験上級:10万語収録 難関大学向け(大学生や社会人も)
受験標準:7万語収録 難関~中堅大学向け
高校初級:5万語収録 高校生や中学生の日常学習向け
そこで、各出版社で発売されている英和辞典をレベル別にまとめてみました。辞書を選ぶ際の参考にしてみてください。
※現在、販売中の主な学習英和辞典(品切れのものや長らく改訂されていないものは除く)
大は小を兼ねない
ここで注意すべきなのが、「大は小を兼ねない」ということです。
例えば、約10万語収録されている『ジーニアス英和辞典』を買えば、東大だろうが、地方の私大や短大だろうが、どこを目指す受験生でも使えるじゃないかと思うかもしれません。
しかしそれは大きな間違いです。
収録語数が多い「受験上級」の辞書は、基本的な事項が簡潔に書かれていたり、表現が難しかったりすることがあります。
「英和辞典を使いこなせない」、「使うのが面倒」と思う方は、もしかしたら使用している英和辞典のレベルが合っていないのかもしれません。
「受験標準」、「高校初級」の辞書は、収録語数こそ少ないですが、英語が苦手な受験生でも使いこなせるように工夫がなされています。
英語が苦手な受験生は無理して「受験上級」の辞書を使うよりも、「高校初級」の辞書のほうが使いこなしやすいと思います。
語数が少ないのが不安と思うかもしれませんが、「高校初級」の辞書では足りないと思うようになったらレベルアップした証拠なので、その時に上のレベルの辞書に乗り換えればいいんです。
また、大学生、社会人の方が、上級の辞書と「受験標準」「高校初級」の辞書を併用するのもアリだと思います。
さて、いよいよおすすめの辞書をご紹介します。
エースクラウン英和辞典(三省堂)
エースクラウン英和辞典第3版
三省堂
投野由紀夫 編
英和5万1千項目
和英小辞典付き
「エースクラウン」の特長は、「発信型」の英語に強いことで、特に基本語の解説が充実していることです。
英語を話す、書くうえで重要な58単語は「フォーカスページ」として特別なページが作られていて、イメージ図、語義の全体像を示した「意味マップ」、コーパス(コンピュータによる言語分析)に基づいたフレーズなどが見やすくまとめられています。
※『エースクラウン英和辞典 第3版』パンフレットより引用
askというのは基本的な単語ですが、「たずねる、たのむ」といった意味は誰でも知っていても、英作文で使いこなすのはなかなか難しいです。
でも、この「フォーカスページ」ではaskという単語のイメージ、意味の広がり、よく使われる例文やフレーズ、重要構文まで、押さえておきたい情報が簡潔にまとめられています。
よくTwitterで「ネイティブはこう言う」とか「○○と××という単語はこう使い分ける」みたいな動物アイコンの図解がバズっているのを見かけますが、そういう多くの人が気になっている情報はちゃんと網羅されています。
このように「基本」をしっかり解説しているのが特長で、初めて英和辞典を使う人にとってはちょうどいい辞書と言えるでしょう。
見逃しがちですが意外と良いのが巻末の付録で、英文法のまとめや簡単な和英辞典に加えて、高校の実業科の生徒のために商業・工業・農業・ITの用語の和英小辞典が掲載されているのですが、受験で特定の分野の英作文が必要な人にも便利です。
個人的にうれしいのは同じ内容でサイズが小さい「小型版」がラインナップされていること。机の上でも邪魔にならないし、持ち歩きにも便利です。
アクシスジーニアス英和辞典(大修館書店)
アクシスジーニアス英和辞典
大修館書店
編集主幹・中邑光男
英和7万5千項目(和英小辞典2万5千項目)
受験用辞書の定番といえば、大修館書店の『ジーニアス英和辞典』。
ただ、「ジーニアス」は上でも書いたように「受験上級」の辞書で、難関大志望の受験生や大学生、社会人を対象としたものです。
辞書に慣れていない人にとっては、くわしすぎて使いこなせないということもあるかもしれません。
そこで「ジーニアス」のやさしいバージョンとして登場したのが、『アクシスジーニアス英和辞典』。
「アクシス」というのは「軸」という意味で、高校生の英語学習の「軸」になるようにという想いを込めて名づけられたそうです。
「ジーニアス」といえば「語法のジーニアス」と言われるぐらい、語法情報のくわしさが特長です。
「アクシス」では語法情報を絞り込んで、受験生の疑問に答えるコラムも充実していて、より受験生が使いやすいようになっています。
収録項目数は7万5千項目と、「受験標準」レベルです。
とはいえ大学受験の勉強で使うなら、「アクシス」で物足りないということはほとんどないでしょう。
コンパスローズ英和辞典(研究社)
コンパスローズ英和辞典
研究社
編・赤須薫 「語のイメージ」監修・大西泰斗/ポール・マクベイ
収録項目:10万5千項目
10万5千項目収録の「受験上級」英和辞典ですが、「語のイメージ」の図解が特長で基本語の解説に重点が置かれています。
「語義のマッピング」も特長です。
これは語源からどのように発展していろいろな語義が生まれたのかをひと目でわかるように図解したものです。
このように図解や読み物が充実した、従来にない上級者向けの学習英和辞典として注目されています。
「コンパスローズ」はシャープの最新の電子辞書にも収録されていますが、読みやすさを考えると紙の辞書で購入したほうがいいかもしれません。
もちろん、この他にも良い英和辞典はたくさんあります。大型書店ではサンプルが展示されていることもあるので、ぜひ実際に見比べて選んでください。
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